つれづれホラーナイト

鑑賞したホラー映画の感想を書いていくブログです。

バスケットケース(1982)

 

監督:フランク・ヘネンロッター

制作国:アメリ

上映時間:93分

キャスト:ケヴィン・ヴァン・ヘンテンリック(ドウェイン)/テリー・スーザン・スミス(シャロン)/ビヴァリー・ボナー(ケイシー)/ロバート・ボーゲル(ホテルのオーナー)/ダイアナ・ブラウン(カッター)

 

シャム双生児をテーマにしたホラー映画ということで、以前から気になっている作品でした。カルト的な評価をされているということは知っていましたが、なるほど、確かにこれは…!と納得。同情する余地もない程、不幸で可哀想な兄弟の心境を考えると胸が詰まる思いでした。

 

〜以下簡単なあらすじ〜

何者かの手に顔を掴まれた医師(リフレンダ―)が死亡するところから物語は始まります。一瞬映った犯人の手(指)は凸凹でイビツ、とても人間とは思えません。

そして舞台はニューヨーク。田舎からやって来たであろう青年(ドウェイン)は、大きなバスケットケースを大事そうに抱えながら、街を歩いていました。そして、とある寂れたホテルに泊まることに。

身なりに反してかなりのお金(札束)を持っているようで、ホテルのオーナーたちも驚きます。

そして部屋に入ったドウェインは、バスケットケースの錠前を外し、ケースの中にいる得体の知れない『ナニカ』と会話を始めるのです…。

当たり前のように、そのナニカに食べ物(ハンバーガーの肉の部分)を与えるドウェイン。すると貪り食うような音が聞こえ、ナニカは確実に生きており、不気味さが際立ちます。そして、リフレンダ―を殺した際に見つけて持ってきた書類に目をやるドウェイン。そこには‘‘H・ニードルマン‘‘と‘‘J・カッター‘‘の文字が。どうやら彼らを殺そうとしているドウェインですが、その背景には一体何が…?と気になる感じで物語は進んでいきます。

 

※以下ネタバレあり感想

バスケットケースの中に入っているのは、ドウェインの双子の兄、ベリアルです。外見はポケモンイシツブテみたいな感じでとても小さく、非常に不気味な造形で、意思を持った肉塊です。ドウェインがハンバーガーの肉やソーセージを与えているところを見ると、主食(?)はお肉な模様。そんなベリアル兄ちゃんですが、性格はかなりの凶暴。殺しをする時は必ずベリアルが実行します。

シャム双生児(結合双生児)だった兄弟。彼らは、ドウェインの右脇腹に上半身だけがくっついた状態で生まれてきました。弟のドウェインは人間としての形を保っていますが、完全に化け物の様相だった兄のベリアルは、彼らの出産時に死亡した母親の事もあって、父親からは酷く疎まれていました。

まだ幼い頃の二人はある日父親の罠に掛かり、違法な分離手術を無理やり受けさせられてしまいます。必死に抵抗するも麻酔を打たれ、手術法も見ている側としても本当に大丈夫かと心配になってしまうくらいの杜撰さです。後から分かるのですが、彼らの手術に立ち会った医師の中には獣医(カッター)もいて、自分たちを人間と見なしていなかったことにも兄弟は苛立ちます。この時の手術は成功し、ドウェインは生きていました。兄のベリアルはゴミ袋に入れられて捨てられていましたが、兄弟には互いの脳内で会話することができる不思議な力、共感能力があり、兄がまだ生きていることを悟ったドウェインはベリアルを助けに行きます。そして、自分たちを嵌めた父親を殺害した後は、唯一の味方であった伯母とひっそりと暮らすのでした…。

そして大人になった兄弟は、自分たちを分離手術で切り離した医師たちに復讐をするためニューヨークにやって来たのでした。ただ、復讐を願っているのは兄のベリアルのようです。

我が子として見ていなかった父親を憎む気持ちは分かります。しかし力づくだったとしても切り離された兄弟はどちらかが死んだ訳ではないので、 医師に対する復讐心に関しては正直もやっとしたものが残りました。ドウェインはともかく、あのまま二人が共感能力を失っていればベリアルは死ぬ運命を辿っていたと思うので、そういうことなのかな。

普通の外見をした弟と、化け物の兄。二人が兄弟愛で結ばれていることは確かですが、ベリアルがドウェインに嫉妬心を抱くのも無理はなく…

ニードルマン医師の病院で受付嬢をしているシャロン(金髪の可愛い姉ちゃん)と、ドウェインは良い感じになるのですが、これにお兄ちゃんは嫉妬するんですね。でもどう頑張っても見た目のハンデがありすぎて、それはベリアルも分かっているんだと思います。分かっていても、自分を差し置いて幸せになろうとしている弟が許せない。物語が進むにつれて、兄弟の仲は段々と不穏になっていきます。

ホテルの宿泊客でちょっとお節介焼きのケイシーと酒を飲みながら、酔った勢いもあってか自分たちの境遇を打ち明けてしまうドウェイン。壮絶な過去を、笑い話のようにケラケラと話すシーンが、印象的でした。その後、酔い潰れたドウェインを部屋に送り届けるケイシー。しかしここで事件が起きます。彼女の部屋に忍び込んだ兄のベリアルは、ケイシーの下着(パンツ)を盗んで部屋に戻ってきます。彼女に気づかれてしまったのでもちろんホテルは大騒ぎですが、ここで私たちが気づくのは、そうか、ベリアルにも性欲があるんだ…ってことです。見た目は肉塊だけど、ベリアルは人なのです。

そしてついには、自分の欲望を満たすためにシャロンまでも手にかけてしまうベリアル。(死んだシャロンの上でXXXしているシーンは度肝を抜かれました。一見の価値アリ…かも)復讐は成功したのに、関係なかった彼女まで殺すなんて!と、ベリアルに怒りが収まらないドウェイン。二人は取っ組み合いになり、窓から地面に落ちて死亡…と、救われないラストです。

前述のパンツ盗みの件だったり、ベリアルが動くシーンがカクカクのコマ送り(ちょっと和んでしまう。かわいい)だったりと真面目に制作しているように見えてブラックコメディな要素も入っていて、面白い作品でした。ホラージャンルとしてはスプラッター寄りになるのかな。丁度いい塩梅の血しぶき。何より兄のベリアルから目が離せない!直情的で何をやらかすか分からないところが恐ろしかったです。バスケットケース、ってシンプルな題名も良いですね。

2、3と続編があるらしいので今度鑑賞したいと思います。